薬剤師のつぶやき

2023-09-18 07:00:00

9/18 薬剤師のつぶやき17 ~皮膚疾患の間違った投薬とマラセチア~

写真 2023-09-17 17 05 20.jpgこの写真は飼い主様の許可を得て、掲載させていただいております。

 

 

年齢17歳 柴犬 マラセチアの診断で長く病院通院。お薬もずっと飲ませていました。(アポキルなど)

でもここまでひどくなり、かゆみも強く、お薬を飲んでも治らず、年齢による痴呆もあるのか噛むようになってしまって治療もできません。

かゆみで悲鳴をあげるように鳴くので飼い主様のご家族様がみるにみかねてご相談にきました。

 

それが7月1日。

 

本来このマラセチアという菌は普通に皮膚にいる常在菌で、皮膚の免疫がおちるとむくむくかゆみを従えてでてきます。

マラセチアは免疫が落ちると出てくるというところがポイント。

 

さてこの子はアポキルなどの薬を使用。

 

アポキルはたしかにかゆみはとめてくれますが、それは免疫を落としてかゆみをしずめるシクロスポリンのような免疫抑制剤の要素があり、これは添付文書にもかかれていることなのですが……

下記が添付文書の抜粋です。

②重要な基本的注意

本剤は免疫系を抑制するので、個々の症例における治療上のリス クとベネフィットを考慮した上で慎重に投与すること。

・本剤は感染症に対する感受性を高め、腫瘍(潜在性の腫瘍を含む) を悪化させる可能性があるため、慎重に投与し、継続的に観察す ること。

本剤の投与開始前に細菌、真菌(皮膚糸状菌、マラセチア等)又 は寄生虫(ノミ、ヒゼンダニ等)感染等について検査し、適切な 治療を行うこと。

・本剤を長期的に投与する場合は、定期的に血液学的及び血液生化 学的検査を実施することが望ましい。

 

薬というのは間違いなく副作用があります。薬剤師の私たちからしたら副作用のない薬は薬ではありません。間違った使用方法は命の危機にもつながります。

 

この子は長年アポキル等の薬を続けたことでこのような結果になり、かゆみで寝ることもできず、泣き叫ぶようになったということはかなりしんどいです。聞いただけでも涙がでます。

 

相談からマラセチアセットをお使いいただきました

 

・・・この子の場合年齢もあったので通常のように洗うことができないこともあり、ティーツリーフォームで皮膚被毛を綺麗にしてマラセチアへの対抗をする、イヤーリリーフウォッシュで皮膚被毛を清浄し、またマラセチアのかゆみが少しでもやわらぐのもあるので使用し、イヤーリリーフドライでマラセチアをしずめるために皮膚免疫を整え皮膚のpHを酸性化させます。

 

これはハーブ専門店を経営されている、ハーバルガイドさんに御相談があり、私に連絡がありました。

飼い主さんの気持ち次第なのでそれを含めてお話いただいき、このケアセットとなりました。

 

飼い主さんは根気よくわんちゃんに少し噛まれながらもこの皮膚免疫を整えるために、毎日毎日がんばった結果このように1ヶ月半でここまで良くなりました。

 

これはわんちゃんと飼い主さんの根気とケアの結果です。

ここまでにしてしまうと簡単には治りません。でもここまでわんちゃんががんばったのも飼い主さんの気持ちが伝わったのだと思います。まずはかゆみも和らげば、わんちゃんにもそれは伝わります。大変かもしれませんが、長期戦かもしれませんが、わんちゃんときちんとむきあって、そしてこの皮膚病とむきあってケアしたら薬に頼らなくても良くなるんです。

 

マラセチアは皮膚の免疫、体の免疫が弱ると出てきます。それをかゆみだけとめたところではこのようにひどくなってしまうのです。安全だし安心な薬で簡単に治る病気なんてこの世にはありません。病気には必ずそれをケアする方法がいくつもありますが、薬が治してくれるわけではなく私たちの体、愛犬愛猫の体の機能が治療するんです。

 

肝臓疾患、腎臓疾患があれば免疫は落ちます。だからこそ血液検査をして体の機能がきちんと正常に動いてくれるようにケアしたり、また食事をかえて病気から少しでも体を守るべく「予防」をするのです。

 

間違ったケアや治療はただひどくなるだけです。

 

もし病院にいってなかなか治らない・・・良くならない・・・悪くなる・・・ということがるのであれば、飼い主さんが先生に愛犬愛猫のために進言してあげてください。このようになるのも先生を信じて薬を服用していたからなのはよくわかりますが、ひどくなっておかしいと思ったらその治療について聞いてください。

 

皮膚疾患は1年でも2年でもかかる疾患です。でもきちんとケアをしたらそんなにひどくなることもなく経過も良いまま過ごせることが多い疾患でもあるのです。アポキルはたしかにかゆみをとめますがそれ以上のことはしてくれません。それをしっかり頭においてまずは皮膚のケア、そして食事内容を見直し、ただ皮膚病によいと書いてある商品でも皮膚疾患の内容によってまったく合わない製品もあります。わからないことはいつでも聞いてください。

 

今日はすこしあつくなったつぶやきでした。