薬剤師のつぶやき
9/20 薬剤師のつぶやき19 ~追記:アポキルについて~
今回アポキルについてのご質問が多かったため、私のところに届いたアポキルへの質問をここにまた追記しておきます。
添付文書を引用しながらご説明いたします。添付文書というのは、皆様もドラッグストアなのでお薬を購入されると中に入っている薬の説明書のことです。
今回は良いところも書いておきますのでご参考までに
良いところ
犬のアレルギー性皮膚炎による痒みに対して投与後4時間以内に効果を発現しプレドニゾロン錠に匹敵する即効性と有効性が示されました。
これはプレドニゾロン(ステロイド)を使用するよりも早くかゆみに対しての効果がでましたということです。ステロイドもかなり効果が高いですが、それよりも早くに効果がでるのでかゆみで寝られない場合などには良いとおもいます。
安全性プロファイルから対象疾患の長期管理を可能とします※。
たしかにほかの薬に比べると長期に投与しても副作用がでにくいということがデータとしてでています。ここまでであればよいのですが、すごく小さい文字で「投与期間は1年を超えないこと」という記載があります。これが皆様の気になさっている長期投与とはどれくらい?のところだと思います。
実は用法用量という使用方法のところに
「オクラシチニブとして体重1kgあたり0.4mgを、1日2回、最長14日間経口投与する。さらに継続する場合には1日1回投与する。ただし、投与期間は1年を超えないこと。」
とあるのです。しかしながら下記のような報告があります。
長期臨床試用(最長630日)における有害事象〈米国〉
犬アトピー性皮膚炎に対する国内臨床試験(P7)における有害事象アポキル錠を、長期投与した際に5%超に認められた有害事象
11.3%尿路感染症・膀胱炎
10.1%嘔吐
9.3%外耳炎
9.3%膿皮症
6.1%下痢
多く報告された有害事象は、無治療あるいは対症療法にて改善し、休薬が必要であった事象は、嘔吐30回のうち、9回でした。
ということなのです。なので2年近く使用してもこれくらいの副作用だよという症例はでています。これをみると「おお!安心安全ではないか!」と思われる方も多いと思います。先生方もそのつもりでご使用されているのではないかと。まあでも2年以上の症例はでていませんので、それ以上の場合の副作用はわかっていません。
問題なのはこの年数もですが、この皮膚疾患がどのような場合かということです。
①対象動物の使用制限等⇨これは使用してはいけない場合を書いてあります。
・次の動物には投与しないこと。
・12ヵ月齢未満の犬[12ヵ月齢未満の犬に対する安全性は確立されていない]
・体重3.0kg未満の犬[用量が過剰となる]
・交配予定の犬及び妊娠・授乳中の犬[交配予定及び妊娠・授乳中の犬に対する安全性は確立されていない]
・副腎皮質機能亢進症等の免疫抑制又は進行性悪性腫瘍の疑いのある犬[免疫抑制作用があるため、症状を悪化させるおそれがある]
・重篤な感染症がある犬[免疫抑制作用があるため、症状を悪化させるおそれがある]
なぜかといえば免疫が落ちるから。基本的には免疫抑制剤という類いになるからです。免疫が落ちれば、もちろん体の機能が落ちるということなので、上記に当てはまる場合には命の危険もあるかも・・・という内容です。特にどこかに腫瘍(良性腫瘍であっても)増悪する場合がありますから使用はできません。
注意事項です。これがもし人間の薬なら絶対使用説明しなければならないことになります。
②重要な基本的注意
・本剤は免疫系を抑制するので、個々の症例における治療上のリスクとベネフィットを考慮した上で慎重に投与すること。
先ほど書いたように免疫が落ちるので、他の病気がある場合は特に使用する際には、様々なリスクなども考え、飼い主さんとも話あいながら使用してくださいという意味
・本剤は感染症に対する感受性を高め、腫瘍(潜在性の腫瘍を含む)を悪化させる可能性があるため、慎重に投与し、継続的に観察すること。
感染症というのは尿路感染症などウイルス感染症なども含まれます。そして腫瘍(良性・悪性ともに)ある場合には悪くなる可能性が高いので必ず検査しながら、様子をみていくことが大切ということ。尿路感染症は腎不全に陥ることもあるので必ず検査が必要です。ストルバイトなどを持つ子が使用するとストルバイトが悪化することもあります。
・本剤の投与開始前に細菌、真菌(皮膚糸状菌、マラセチア等)又は寄生虫(ノミ、ヒゼンダニ等)感染等について検査し、適切な治療を行うこと。
のみダニによる皮膚疾患、接触アレルギー、真菌やマラセチア常在菌による皮膚疾患にはほぼ効果がないということです。そうは書いていませんがこれは適切な治療をおこなうとの記載が効かないよといっています。
・本剤を長期的に投与する場合は、定期的に血液学的及び血液生化学的検査を実施することが望ましい。
これが長期投与するときの条件です。さまざまな検査を重ねながら、投与していかなければ副作用はでますよという意味。
基本的にこのお薬は
アトピー性皮膚炎
アレルギー性皮膚炎
のお薬であるということをお忘れなく。かゆみを止めるには最大限発揮してくれますが、治療としての効果はやはり食事や皮膚のケアが必要となります。これは資料にも書いてありますのでぜひとも、これだけでケアできないことを忘れないでください。
多くの子が皮膚疾患を抱え、悩んでいます。
かゆみをごまかすのではなく、そのかゆみとともに生きるためにどうしたらよいかということも必要になってきますので、これからまた引き続き皮膚疾患に関しては少しずつ書いていきたいと思います。